ChatGPT・Codexの活用事例
建設業界で見られる生成AI活用の広がりを、ChatGPTとCodexそれぞれの公開されている取り組みを参考にしたモデルケースで紹介します。
ChatGPTやCodexのような生成AI(文章などを新しく作り出すAIの総称)は、建設業界でも既にさまざまな形で活用が始まっています。ここでは、公開されている取り組みを参考に、よくある業務改善のパターンをモデルケースとして紹介します。まずChatGPT(会話しながら助けてもらう使い方)の事例を9個、続いてCodex(作業を代わりに行うプログラムを作ってもらう使い方)の事例を6個、紹介します。
なお、本記事の事例は、特定企業の取り組みをそのまま紹介したものではなく、建設現場の実態に即して再構成したモデルケースです。ChatGPTの事例は業界の公開情報をもとに、Codexの事例は他業界での先端事例を建設業務に当てはめて構成しています。
目次
- 工事写真から台帳を自動作成
- 会議のあと、話しかけるだけで議事録を作成
- 今日の作業内容から過去の事故事例を検索
- 週次報告書の下書きをAIで作成
- メール・文章作成や要約をAIに任せる
- 現場の記録からExcel・Word・PDF資料を作成
- 法令・条例の調査をAIで効率化
- 似た過去案件をAIで検索・比較
- 全社員向けの社内AIアシスタントを導入
- 現場費用の経費データをExcelへ自動入力
- 現場記録データから報告書を自動作成
- 社内システムの定型操作を自動化
- 老朽化した社内システムを大規模に入れ替え
- 社内システムの不具合をまとめて調査・修正
- 現場からの要望をもとに簡易ツールを試作
- まとめ
工事写真から台帳を自動作成
新築や改修工事を手がける中小工務店の例です。現場ごとに写真整理の専門スタッフを置けず、日中は施工管理に追われるため、写真整理は帰社後の深夜作業になりがちでした。この現場では、黒板の文字読み取りと台帳PDFの下書き作成をAIに任せ、現場監督は写真と施工箇所の照合や品質チェックに専念する運用に変えました。変化をまとめると、次のとおりです。

- 以前:現場監督が撮影した工事写真を一枚ずつ確認し、工事名・場所・撮影日などを手入力で台帳(記録を一覧にまとめた表)にまとめていました。
- 現在:写真をアップロードするとAIが写真に写った黒板の記載を読み取り、台帳形式にまとめてPDF化してくれます。
これまで何時間もかかっていた台帳作成が確認作業だけで済むようになり、深夜の残業が解消されました。翌日の工程調整や協力会社との打ち合わせなど、本来注力すべきコア業務に集中できるようになっています。
会議のあと、話しかけるだけで議事録を作成
定例会議や施主打ち合わせのたびに、メモを頼りに議事録を一から書き起こす作業に追われていた中堅建設会社の例です。現場と事務所を行き来する現場監督は執筆時間を確保しづらく、決定事項の周知が遅れがちでした。この会社では、会議直後の音声やメモからAIに議事録ドラフトを作成させ、参加者は決定事項や期日の事実確認だけを行う形にしました。変化をまとめると、次のとおりです。

- 以前:会議の内容を振り返りながら、議事録を手入力でまとめていました。
- 現在:会議直後に、話した内容や決定事項を声でAIに伝えると、議事録の形にまとめてくれます。
会議終了からわずか数分でドラフトが完成し、その日のうちに関係者へ共有できるようになりました。「言った・言わない」のトラブルを防ぎ、現場の意思決定スピードが大きく向上しています。
今日の作業内容から過去の事故事例を検索
過去の災害事例やヒヤリハット報告書が社内サーバーに埋もれ、日々の朝礼やKY(危険予知)活動に活かせていなかった専門工事会社の例です。経験の浅い若手ほど当日の作業リスクを想像しづらい課題がありました。そこで当日の作業内容からAIに関連する過去事例と対策を瞬時に検索させ、現場責任者が現場条件に合致しているかを判断して安全指示を出す運用にしました。変化をまとめると、次のとおりです。

- 以前:類似作業での過去の事故・不具合事例を確認したくても、担当者の経験や記憶に頼るしかありませんでした。
- 現在:その日の作業内容を入力すると、AIが社内に蓄積された過去の災害・不具合事例から関連するものを検索し、原因・対策とあわせて提示してくれます。
膨大な過去資料を探す手間がなくなり、毎朝のKY活動で実効性の高い安全指示を出せるようになりました。ベテランの経験値に依存せず、過去の教訓を誰でも即座に安全管理へ活かせる体制が整っています。
週次報告書の下書きをAIで作成
発注者や元請へ提出する週次進捗報告書の作成に、毎週末の半日を取られていた建設会社の例です。日々の作業日報から進捗や搬入状況を拾い集める作業が負担になっていました。この会社では、日報テキストから工種ごとの進捗サマリーや特記事項をAIに要約・下書きさせ、現場監督は実態との照合と重要事項の確認に専念させました。変化をまとめると、次のとおりです。

- 以前:日々の作業記録をもとに、週次報告書を毎回一から書き起こしていました。
- 現在:日々の作業記録をAIが要約し、週次報告書の下書きを自動で作成してくれます。
過去の日報をひっくり返して文章を組み立てる時間がなくなり、下書きのチェックだけで提出資料が完成するようになりました。週末の現場巡回や翌週の施工手順の確認に十分な時間を割けるようになっています。
メール・文章作成や要約をAIに任せる
施主への進捗案内や近隣挨拶文の作成、長文の仕様書読み込みなどに日々時間を奪われていた工務店の例です。失礼のない文面の検討に悩み、本来の業務が圧迫されていました。そこで箇条書きのメモから状況に応じた丁寧な文章の下書き作成や要約をAIに任せ、担当者は文面チェックと最終送信を行う形に整えました。変化をまとめると、次のとおりです。

- 以前:メールの下書き・資料の要約・社内向けの簡単な質問対応など、一つひとつの作業に時間を取られていました。
- 現在:伝えたい要点を箇条書きで渡すと、AIが状況に応じた文面の下書きを作り、長い資料も要点をまとめてくれます。
文章の言い回しに悩む時間が劇的に減り、要点を整理して迅速に連絡できるようになりました。連絡のレスポンスが早くなったことで、施主や協力会社との信頼関係強化にもつながっています。
現場の記録からExcel・Word・PDF資料を作成
現場監督がチャットや手書きで送る作業報告を、事務員が所定のExcel管理表に打ち直し、さらにWordやPDF報告書に整形していた工務店の例です。毎日の転記作業だけで数時間を費やし、月末には深夜残業の原因になっていました。この工務店では、現場記録のテキストからExcelシートへのデータ流し込みと帳票変換をAIに任せ、人は数量の照合に集中させました。変化をまとめると、次のとおりです。

- 以前:現場日報などの記録を、担当者が手作業でExcelに転記し、報告書としてまとめていました。
- 現在:現場日報などの記録をAIに読み込ませ、指定した様式のExcelへの転記や、報告書のPDF化まで行わせています。
単調でミスの起きやすい手入力作業がなくなり、確認だけで提出資料を整えられるようになりました。月末の転記ラッシュが解消され、請求や支払いの締め処理も大幅に前倒しできています。
法令・条例の調査をAIで効率化
設計初期の段階で、敷地ごとに異なる建築基準法や自治体の景観条例、消防法などの調査に追われていた設計事務所の例です。何冊もの手引きや役所ホームページの確認に時間がかかり、設計者の重圧になっていました。この事務所では、計画予定地や規模から確認すべき条文や規制項目をAIにリストアップさせ、建築士が実際の適用判断や役所協議を担う運用にしました。変化をまとめると、次のとおりです。

- 以前:建築基準法・地域条例・省エネ基準などを、担当者が個別に調べて整理していました。
- 現在:AIと社内の法令データベースを組み合わせ、関連する法令・条例の調査と整理を支援させています。
調査の初動で確認すべき要点を瞬時に網羅できるようになり、法令調べにかかる時間を大幅に圧縮できました。確認漏れの不安が解消され、プラン提案や行政協議の準備を迅速に進められるようになっています。
似た過去案件をAIで検索・比較
新規の設計や見積のたびに、過去の施工実績から似た案件を探し出す作業に苦労していた建設会社の例です。用途や規模が近い実績を参考にしたいものの、数千件の図面フォルダを手動で開いて探すしかありませんでした。そこで建物の条件からAIに類似案件を横断検索させ、比較表を作成させたうえで、設計者が流用の可否を技術判断する形にしました。変化をまとめると、次のとおりです。

- 以前:条件が近い過去の案件を、担当者が手作業で探し出していました。
- 現在:建物の条件から、AIに過去の類似案件を検索させ、比較資料を作成させています。
過去案件を探し出す時間が劇的に短縮され、社内の施工実績を活かした精度の高い提案が即座にできるようになりました。過去の工夫やノウハウを組織全体で共有・再利用できる体制が実現しています。
全社員向けの社内AIアシスタントを導入
一部の社員だけが個別にAIを使っており、全社的な活用や情報共有が進んでいなかった総合建設会社の例です。個人の自己流利用ではセキュリティの懸念もありました。そこで全社員が安全に使える社内専用のAIチャット基盤を整備し、社内規程の照会や部門をまたぐ情報共有にも使える形にしたうえで、利用ルールを定めて各自が最終確認を行う運用にしました。変化をまとめると、次のとおりです。

- 以前:生成AIの活用が一部の部署・担当者に限られていました。
- 現在:全社員が使える社内専用のAIチャット基盤を整え、利用ルールを定めたうえで全部署へ展開しています。
セキュリティの不安なく全社員がAIを使える環境が整い、ITが苦手だった現場担当者も含めて事務処理が効率化されました。部門を超えた活用ノウハウの共有が進み、会社全体の生産性向上につながっています。
ここからは、Codexの活用事例です。前の記事「Codex入門」で紹介したとおり、Codexはプログラムの作成や修正を支援するAIです。会話で答えをもらうのではなく、作業を代わりに行うプログラムをCodexに作らせ、それを繰り返し使う形が中心になります。
現場費用の経費データをExcelへ自動入力
交通費や資材購入など、現場監督が立て替えた大量のレシート精算に追われていた建設会社の例です。月末になると領収書を1枚ずつ見ながらExcel出納帳に手入力しており、現場監督の月末業務を圧迫していました。この会社では、レシート画像から日付や金額を読み取り、経費精算シートへ工事コードごとに自動転記するプログラムをCodexに作らせ、人は現物との照合と承認に専念させました。変化をまとめると、次のとおりです。

- 以前:レシートや請求書の内容を見ながら、日付・金額・品目を経費精算シートへ手入力していました。
- 現在:Codexに作らせたプログラムがレシート画像を読み取り、各シートの入力ルールに沿って経費精算シートへ自動で転記します。
数字の手入力作業がなくなり、領収書の糊付けと確認だけで精算が完了するようになりました。現場監督の月末残業が解消されただけでなく、入力ミスによる経理からの差し戻しも大幅に減少しています。
現場記録データから報告書を自動作成
現場から届く生データ(稼働時間や進捗計測値など)をもとに、役員や発注者向けの報告書を作成していた建設会社の例です。生データをExcelで集計し、グラフを作って報告書に貼り付ける手作業が何段階もあり、資料作りに丸1日取られていました。この会社ではデータの整形からグラフ描画、報告書テンプレートへの配置までを一度に行うプログラムをCodexに作らせ、人は傾向の確認と考察コメントの記入に注力させました。変化をまとめると、次のとおりです。

- 以前:現場データを集計ソフトで整理し、グラフや表を作成したうえで、報告書に貼り付けていました。
- 現在:Codexに作らせたプログラムに現場データを渡すだけで、集計・グラフ作成・報告書へのまとめまでが一度に終わります。
データの整理やグラフのコピペ作業がゼロになり、ワンクリックで報告書が出力されるようになりました。資料作成にかかる時間が大幅に減り、数値を踏まえた工事歩掛の改善やコスト検討に時間を使えるようになっています。
社内システムの定型操作を自動化
基幹システムや安全管理クラウドに毎朝ログインし、データのダウンロードや承認操作を繰り返していた中堅建設会社の例です。決まった手順の画面操作に毎日30分〜1時間かかり、現場監督のストレスになっていました。そこで、毎朝の定型操作を行うプログラムをCodexに作らせて無人で動かし、担当者は処理結果のログ確認と例外時の対応だけを行う運用にしました。変化をまとめると、次のとおりです。

- 以前:社内システムにログインし、決まった手順で毎日同じ操作を繰り返していました。
- 現在:その操作手順を再現するプログラムをCodexに作らせ、毎朝自動で動かしています。
ルーティン操作から解放され、出社した時点で必要なデータが揃っている状態を作れました。手作業の確認漏れがなくなり、朝礼の準備や職人への安全指示など、現場の最前線の業務に朝一番から集中できるようになっています。
老朽化した社内システムを大規模に入れ替え
10年以上前に開発した工程管理システムが老朽化し、改修したくても当時の担当者が退職していて手が出せなかった建設会社の例です。外注すると莫大な費用と年単位の期間が見込まれ、着手を諦めていました。そこでCodexに既存コードを解析させて機能やロジックを整理し、最新環境への書き換えを並行して支援させ、社内IT担当者が動作テストと仕様検証を進めました。変化をまとめると、次のとおりです。

- 以前:古いシステムの入れ替えは、数年単位の作業になると見込まれ、着手が見送られていました。
- 現在:Codexに既存システムの内容を確認させながら、複数の作業を並行して進めさせ、入れ替え作業を数週間規模まで圧縮しています。
コード解析と移行作業を猛スピードで進められ、年単位と見込まれていた入れ替えを数週間規模の現実的なスケジュールで実現できました。システムのブラックボックス化が解消され、現場の要望に合わせた改善が再び行えるようになっています。
社内システムの不具合をまとめて調査・修正
社内アプリの細かい表示崩れや印刷エラーが後回しになり、現場からの不具合報告が数十件も溜まっていた会社の例です。担当プログラマーは新機能の開発に追われ、原因調査に手が回っていませんでした。この会社ではエラーログや関連コードをCodexに確認させ、原因調査から修正案の提示までを一括で行わせ、担当者は修正コードの検証と動作テストに集中しました。変化をまとめると、次のとおりです。

- 以前:不具合の報告を受けるたびに、担当者が原因を調査し、修正していました。
- 現在:Codexに関連するファイルをまとめて確認させ、原因調査から修正案の提示までを一度に行わせています。
1件ずつ時間をかけていた原因究明が数分で完了し、修正までのスピードが大幅に上がりました。長年放置されていた細かな不具合が次々と解消され、現場スタッフがストレスなくシステムを使えるようになっています。
現場からの要望をもとに簡易ツールを試作
「資材の在庫をスマホで手軽に見たい」といった現場の改善アイデアがあっても、外注予算がつかずExcelの我慢運用に戻っていた会社の例です。現場の工夫の芽が立ち消えになっていました。そこで現場の要望メモからCodexに簡易ツールのプロトタイプを短時間で作らせ、現場監督が実際に触って使い勝手をフィードバックしながら改善を重ねる形にしました。変化をまとめると、次のとおりです。

- 以前:現場からの要望を聞いても、実際に動くものができるまで時間がかかり、対応が後回しになっていました。
- 現在:現場の要望をCodexに伝えると、実際に動く簡易ツールの試作品をその場で作らせられます。
アイデアが出たその日のうちに動くツールを現場で試せるようになり、現場主導のスピード感ある業務改善が実現しました。「自分たちの声がすぐ形になる」という成功体験が生まれ、業務改善の提案が活発に出るようになっています。
まとめ
- 建設業界でも、写真台帳や議事録の作成など、現場の記録をラクにするAI活用が広がっている
- 過去の事故事例や法令、類似案件などを「探す」時間を減らす使い方も多い
- 週次報告書やExcel・PDF資料の作成など、書類作成の下書きをAIに任せる事例もある
- Codexを使うと、経費データの転記や社内システムの改修・試作など、作業を代わりに行うプログラムを作ってもらうこともできる
- どの事例でも、AIが作った内容をそのまま使うのではなく、必ず人が最終確認する運用になっている
- 全社的な導入から一部業務での活用まで、会社の規模やフェーズに応じた始め方がある